外国税クレジット
今回の税金の話も前回の通常配信に引き続き外国税クレジットの解説をします。まずは簡単に前回のおさらいです。
各国間の租税条約により定められた外国税クレジットとは、海外所得に対する税金を海外で納めた場合に申告する権利が発生します。アメリカでは全世界所得を申告しなければならないので、海外所得に対しても税が課されます。しかし、海外所得に対して海外で支払った税金ををアメリカの全世界所得に対する税金から差し引くことができます。その結果、二重課税を避けることができます。しかしながら、租税条約は各国間の取り決めであり、州と海外の取り決めではありません。なので、カリフォルニア州では海外所得に対して二重課税されることになります。
クレジットの上限
外国税クレジットの上限は(海外所得÷全世界所得)×アメリカの税金、という計算式で求められます。アメリカの税金とは、全世界所得に対してアメリカの税率で算出された税金です。そしてアメリカの税金の中で、海外所得の全世界所得に対する割合がクレジットの上限となります。このクレジットは支払った税金の外国税率がアメリカ税率より高い場合、アメリカで税金を支払う必要がなく、逆に外国税率がアメリカ税率より低い場合その差額をアメリカで支払う必要があります。
上記を計算式で表すと、
海外税率<アメリカ税率→海外所得に対する課税あり
海外税率>アメリカ税率→海外所得に対する課税なし
となります。
前述した定義に実際の数字を当てはめてみて見ましょう。海外所得が1万ドルでアメリカ所得が4万ドルであると仮定します。この場合、全世界所得は海外所得1万ドル+アメリカ所得4万ドル=5万ドルとなります。そして5万ドルに対するアメリカの税金が1万ドルであり、海外でA. 1500ドル B. 3000ドルの税金を支払ったと仮定します。
この場合のクレジット上限は前述した公式、(海外所得÷全世界所得)×アメリカの税金に当てはめると、1万÷5万×1万=2000ドルとなります。なので、
A.1500ドル支払った場合:アメリカで海外所得に対し2000ドル-1500ドル=500ドルを支払わなければなりません、
B.3000ドル支払った場合:上限が2000ドルなので、海外で支払った税金で上限を超える部分、1000ドルはクレジットとしてとることができません。しかし、その1000ドルは過去1年に遡って、または未来10年に繰り越して外国税クレジットが上限以下の年に利用することができます。
その仕組みの例を挙げますと、2019年はB.3000ドルの税金を海外で支払い、全く同じ条件で2020年はA.1500ドルの税金を海外で支払ったとします。その結果、上限2000ドルとA.1500ドルの差額500ドルを前年度から繰り越すことができます。そして残り500ドルは未来9年に繰り越してクレジットを取れます。
クレジットの対象とならない税
・アメリカで申告しなくて良い収入に対する外国税
租税条約を結んでいる国で税金を支払った場合、外国税クレジットを取れる権利か、外国所得を総所得から除外する権利が生まれます。後者を選択された場合、外国税クレジットを申告できません。
・法人の情報開示を怠った場合
法人の場合、暦年で30日以上海外法人をコントロール下に置き、情報をアメリカで開示しなかった。
※コントロール下とは50%以上の議決権を持つか50%以上の株式を所有する場合です。
・石油・天然ガス・鉱物に対する税